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【読み物】弥涼暮れゆく空宙の向こうに・2 byすずきささ

  1. 2014.05.09(金) _12:04:31
  2. 小説
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「よっ、相棒!」


フランカさんから受けたクライアントオーダーの食材をそろえてアークスシップに戻って来ると、出口でアフィンに声を掛けられた。


「アフィン?どうしたの?」


私が答えると、アフィンは右手を頭に当てて顔をしかめた。

なんとなく言いにくそうにしている。


「どーしたのっていうか……お前さ、ナベリウスの凍土行けるようになった?」

「うん」

「そっかそっか!俺も今度行けるようになったんだよ。で、行ったか?」

「ううん、まだだよ」


首を横に振った私を見て、アフィンはほっと小さく溜め息をついた。


「良かったら一緒に行こうぜ。初めての場所にひとりでってのも心細いしさ」


そう言うと「こんなこと頼めるの相棒しかいないしなー」と恥ずかしそうに笑った。

誰だって初めての場所は不安だ。

けれど、アフィンはそれを「かっこ悪い」と思っているらしい。

気にする事ないのにと思いながらも、私はすぐに頷いた。

頼ってもらえるのはすごくうれしい。


「うん、もちろんいいよ」

「そう言ってくれると思った。頼りにしてるぜ、相棒」

「うん。任せて」


私は、守られる側より守る側になりたい。

だから誰かに頼ってもらえるってことは、少しずつその目標に近付けているって証明になってる気がする。

いつの日かもっと強くなって、みんなを守る存在になりたいんだ。


フランカさんに食材を引き渡して、報酬を受け取った。

それからもう一度ロビーでアフィンと落ち合い、私たちはナベリウスの森林の先に広がるという凍土へと向かった。


「おぉ、これが雪ってやつかー」

「白い……。全部が真っ白」


キャンプシップを出てすぐ、私たちはどちらともなく足を止めた。

私もアフィンも、見たことのない白銀の世界を前にしばし立ち尽くした。


大気中の水蒸気が冷えて氷の結晶となり降り積もったものだという知識はある。

けれどこんなにたくさん……地面だけでなく周囲の木々、果ては遠くの山々まで覆い尽くしている白が全部それだなんて信じられなかった。

それに氷のはずなのに、足元からはふわふわと綿のように柔らかい感触が伝わってくる。


「うっわー、見ろよ相棒。最高気温が-5℃だぜ。訓練以外でマイナスとか初めて見た」


アフィンは、目の前に開いたスクリーンの気温のところを拡大して見せてくれた。


「本当だ。そうやって数字で確認すると改めて凄いと思うよ。空気まで凍ってるみたいだよね」

「そういや、エメラインにダイヤモンドダスト見て来いって頼まれてんだよな」

「うん。どんな感じなんだろうね?」

「そうだなー。どんなんだろなー。ま、百聞は一見に如かず。運が良けりゃ見られるだろ。そろそろ行こうぜ」

「そうだね」


お互いに頷いて先へ進んだものの、またすぐに足を止めることになった。

目の前の道は途絶え、底の見えない谷が行く手を阻んでいた。

周囲は絶壁で登れそうにない。

これじゃ迂回するのも無理だった。


アフィンが恐る恐る谷底を覗きこんだ後で向こう側を眺める。


「飛び越えられっかなー……」

「さすがに無理じゃない?」

「だよなぁ?」


私たちが顔を見合わせて肩をすくめたその時、後ろから元気な声が聞こえた。

 

「あれー!?」


振り返ると、アイシャさんがこちらへ向かって走って来るところだった。

その後ろをソルさんが追いかけてくる。


「アイシャさん!ソルさん!」

「いすずちゃんとアフィンフィンみーっけ!」


アイシャさんは走って来たそのままの勢いで私に飛びついて来た。

不意をつかれて思わず後ろによろける。

けれど背後は底の見えない谷。


「ア、アイシャさん!!落ちますっ!!」


アイシャさんを抱きとめながら、ふたりで落ちてしまわないよう渾身の力で踏みとどまった。


(あ、危なかった……)


寿命が十年縮むくらい焦った私の気持ちを知ってか知らずか、アイシャさんはにこにことうれしそうに「こんにちは!」と微笑んでくれた。


「こんにちは。アイシャさん、ソルさん」

「やあ。任務中?」

「はい。私たち初めて来たんですけど、凄いところですね」

「アイシャたちもお仕事中だよー」


アイシャさんが「えっへん」とばかりに胸を張った。


「俺たちと一緒に行く?」

「お邪魔になったらいけないので……」


ソルさんがせっかく誘ってくれたのに、私は反射的に首を横に振ってしまった。

そんな私を見てソルさんは苦笑いをこぼす。


「大丈夫。邪魔になんてならないよ。それに、初めてならガイドがあった方が安心だろ」

「ラッキーじゃん。ここは先輩に甘えさせてもらおうぜ、相棒」


アフィンが嬉しそうに頷くので、私もそれにつられて結局頷いた。


「じゃぁ、お願いします」

「うん」


すぐにソルさんからパーティーへの招待状が届く。

私とアフィンがパーティーに加わったのを確認して、アイシャさんが笑顔で右腕を突き上げた。


「しゅっぱーつ!」

「って言われても、この谷越えられねーなって立ち往生してたんですけど」


アフィンがそう言って腰に手を当てた。


「あれを使うの」

「あれ?」

「?」


アイシャさんが指差した先に何があるのか分からなくて、私とアフィンは同時に首を傾げた。


「これだよ」


ソルさんは少し歩き、岩の上で青く光るサークルの前に立った。

サークルから谷の向こうに向かって同じような青い光が伸びている。


「俺の後に続いて」


そう言ってソルさんは青く光るサークルから大きくジャンプした。

なるほど、このサークルがジャンプを補助してくれるのか……と、私がなにげなく青く光るサークルに乗ると、ものすごい勢いで体が空中へと投げ出された。


「わわっ!!」


「相棒?!」と叫ぶアフィンの声が、この一瞬でもう遥か後方に聞こえた。

跳ぶつもりがないままに飛ばされてバランスを崩している上に、跳び出すタイミングも早かったらしくて、先に跳んだソルさんの背中目掛けて自分が降っていく。

このままじゃソルさんの真上に落ちる!

分かっているけど、どうしようもなかった。


(ぶつかる!!)


もうダメだと思ったその時、危険を察知して振り返ったソルさんが片腕で私の体を受けとめてくれた。


「大丈夫か?」

「は、はいっ。大丈夫です!すみませんっ」

「よかった」


ソルさんがにこっと笑うのを間近で直視した瞬間、目の前をチカチカと星が瞬いた。

これはちょっと直視してはいけないものだったかも――なんて思っていると、アフィンとアイシャさんが追いついてきた。


「すっげー!ソルさん、かっこいい!」


アフィンの声に我に帰り、まだソルさんの腕にしがみついていた私は慌ててソルさんから離れた。


「使い方はわかったよな。次、行くぞ」


ソルさんはまるで何もなかったように先に進んで次のサークルを見つけると、また最初に跳んだ。

すると、今度はアイシャさんがサークルに駆け寄り、間髪いれずにその後を跳ぶ。


「えっ」

「あっ」


私たちが声を掛けようとするも間に合わず、案の定谷の向こうでソルさんがアイシャさんに背中からのし掛かられてべしゃあとつぶれたのが見えた。


「大丈夫ですか?!」


私とアフィンが慌てて追いつくと、アイシャさんがソルさんの背中の上でぷくっと頬を膨らませていた。


「もう!ちゃんとうけとめてよね!」

「アイシャ、そういうなら受けとめられるように跳んでくれ……」


そのやりとりを見ていたアフィンが声を潜める。


「このふたりは、アイシャさんのが強いんだな」

「そうみたいだね……」


ダーク・ラグネに単身で斬りかかっていくソルさんも、アイシャさんには敵わないみたいだ。




その後も青く光るサークルを駆使して谷を飛び越え、私たちは凍土の探索を進めた。

原生生物やダーカーもそれなりに遭遇したけれど、ソルさんとアイシャさんがいてくれたお陰でそこまで苦労を感じることはなかった。


凍土に入ってどのくらい経った頃だろう。

少し前からちらちらと降りだしていた雪は次第にその量が増え、程なくして強い風に煽られ景色すらも白く覆ってしまった。


「吹雪いて来たな。視界が悪いから気をつけろ」

「はい」

「了解」


ソルさんの言葉に私とアフィンは深く頷いた。

この視界の悪さでは、レーダーがあるとはいえはぐれればやっぱり危険だ。

吹雪の中でもお構いなしに原生生物やダーカーが現れる。

なるべくレーダーを見て、先頭を行くソルさんと自分の位置を確かめながら進んだ。


突然群れで現れたミクダを四人で全部倒す。

再び走り出したソルさんを追い掛けながら、レーダーに目をやった。


「あれ?」


レーダーから感じる違和感。

アイシャさんを示すマーカーが私たちの進む方向とは全然違う方に動いていた。

私たちは二股に分かれた道の右側を。

アイシャさんは、二股に分かれていた道の左側を進んでいる。


「アイシャさん?!」

「俺、アイシャさん呼んで来るよ!」


私たちの最後尾を走っていたアフィンがアイシャさんを追った。

アイシャさんが付いて来ない事に気付いていないのか、そのまま進んで行くソルさんに声を掛けようとしたその時。

吹雪がやんで辺りがふっと静かになった。


「弥涼、ほら上」

「?」


足を止めたソルさんに言われるまま見上げると、キラキラキラキラと幾つもの小さな光が辺り一面に散らばっていた。


「ダイヤモンドダストだ」

「……すごい」


ふわふわと降る雪も綺麗だと思ったけれど、煌めきながら宙を漂うダイヤモンドダストは雪以上に綺麗で神秘的なものだった。


「綺麗だろ?」

「はい」

「見せてあげられて良かった」


そう言って、ソルさんはにこっと笑う。


「!」


また目の前を星が飛んでいく。

やっぱりこの笑顔は直視すると危険だ……。


私がそんなことを考えているなんて知る由もないソルさんは、アイシャさんの名前を呼んで踵を返す。


「アイシャ!アイシャ!」



(そうだよ。ソルさんにはアイシャさんがいるんだし)


そう自分に言い聞かせて、私もソルさんの後を追った。


「アイシャ!ダイヤモンドダストだ!エメラインのクライアントオーダークリアしたか?」

「受けるの忘れてたー。うふふふっ」

「おまえはー。何のために出てきたと思ってるんだ……」


にこにこと悪気なく微笑むアイシャさんを見て、ソルさんは大きく肩を落とす。

それでもなんだか楽しそうに見えるのはきっと気のせいじゃない。


なんか、こういうの見覚えがある。


「相棒?」

「あ……何?」

「いや、ぼーっとしてるからさ」

「ダイヤモンドダスト、綺麗だね」

「あぁ。エメラインに報告できるな。最初でいきなり見れるなんて、俺たちついてるよな」

「うん」


もう一度空を見上げてダイヤモンドダストを眺める。

アフィンの言う通り、初めての凍土でダイヤモンドダストを見る事が出来たなんてラッキーだったなーと思いながら、私は胸の奥に少しだけがっかりしている部分がある事に気付いていた。


こういうがっかりした気持ち前にも味わった事がある。

私が憧れていた人には、もう大切な人がいた。

何もできない。

どうにもならない。

どうしようもない気持ち。


もう、あんな思いはしたくない。



なのにーー。

 

【読み物】弥涼暮れゆく空宙の向こうに・1 byすずきささ
【読み物】弥涼暮れゆく空宙の向こうに・2 byすずきささ
【読み物】弥涼暮れゆく空宙の向こうに・3 byすずきささ
【読み物】弥涼暮れゆく空宙の向こうに・4 byすずきささ

* * * * * *



※この物語はフィクションです。

アーカムのメンバーが登場しますが、プレイ日記やチャットのログなどではありません。

でも、個々のキャラクターは押さえてるよ!


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