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カムフラージュスカイ(2)

  1. 2015.03.31(火) _21:15:54
  2. 小説
  3.  コメント:4
カムフラージュスカイ(1)はこちら



「ダーカー……」

候補生として既にアークスからある程度のレクチャーを受けているじんくんがその言葉を口にした。
他のアークス候補生達も、あの黒い物体が何なのか瞬時に把握したのだろう。

「逃げろ!」

じんくんが発した大きな声を合図に、私たちは蜘蛛の子を散らすように駆け出した。

噂では聞いていた。
ダーカーが市街地まで侵入してきて街をめちゃくちゃに破壊していくということを。
まさか、自分の住む街にまで現れるなんて。

「この先の公園にシェルターがあります。そこまで走りましょう」
「うん」

散り散りになった生徒の一部は、私たちと同じ方向へと走っていた。
この先の公園まで走ればシェルターが――。

シェルターが、あるはずだった。
同じシェルターを目指していたみんなの足が力なく止まる。
だって、目指していた場所には大きな穴しか開いてなくて……。

「そんな……」

絶望で頭が真っ白になるのと同時に、男女入り混じった悲鳴が聞こえた。
シェルターがあるはずだったところに開いた穴から無数のダーカーが這い出して、次々とみんなに襲い掛かる。
ダーカーの動きは素早くて、はっと気づいた時にはもう私の目の前でその鋭い爪を振り上げていた。

「弥涼さん!」

じんくんが私の腕を引く。
でも、その場からはあまり離れられなくて。
このままじゃ、私だけじゃなくてじんくんまで――!

きつく目を閉じ次に来る痛みに身構えると、衝撃の代わりにキィィィという耳障りな鳴き声のような音が聞こえた。
恐る恐る目を開けると鋭い爪が黒い霧となって散っていくところだった。
周囲にちらばっていた同じ形のダーカーもまるで蒸発したように霧散していった。

助かった……?

シャキン。と金属が触れ合う音がする。
音のした方向を見ると、カタナを装備して黒いコスチュームを纏った女の人がピンクブロンドの髪を掻き上げていた。
pso20141128_002747_058.jpg
一瞬、大人っぽくて誰かわからなかった。
たった一年で、途方もなく遠い人になってしまったような気がした。

「……ルミ?」
「弥涼、大丈夫?」

返事の代わりに涙がこぼれた。
どこも痛くないしなんともなかったけれど、涙は次から次へと溢れて自分じゃどうしようもなかった。
この一年、ルミからは何の音沙汰もなかった。
元気なのかどうかもわからなかった。
「便りの無いのは良い便り」それだけが私の支えだった。
欲しかった答えが目の前にあって、今までの寂しさやルミが無事だったという安堵で心がぐちゃぐちゃだった。

「どうしたの?どこか怪我してる?なら手当を……」
「会いたかった!」
「あー……ごめん。とりあえず、苦情は後で聞くよ。怪我した人を保護しないと」

そう言うと、ルミは怪我をして地面に倒れている人の側に走って行った。
ルミが近づくその順番に、怪我した人たちが光に包まれ転送されて行く。

「あぁ、もう!」

不意にルミが苛立ちの声を上げた。
つかつかと不機嫌な足取りで私たちの元へ戻ってくると、腰に手を当ててじんくんの正面に立った。

「じんくん、アークス候補生なんだって?」
「はい」
「じゃ、これ」

ルミはじんくんに大剣を手渡す。

「転送が間に合わなくて怪我人優先なんだって。元気な人は残存しているシェルターに走らせろって言われたわ。ひとりで出てきちゃったからちょっと手伝ってね。剣の使い方は体で覚えて」
「わ、わかりました」

じんくんは緊張した面持ちで渡された大剣を握りしめた。
覚悟を決めたじんくんの表情を見たルミは、大きく息を吸って周囲に向かって声を張り上げた。

「E地区のシェルターに向かう!動ける人は頑張ってE地区に向かって走って!アークス候補生は武器を持って護衛!訓練前だけど問題ないよね!無茶する必要はない!ダーカーは私が全部蹴散らす!走れ!」

みんな動揺して硬直していると、ルミはもう一度声を張り上げた。

「は・し・れ!」

ルミの迫力に気圧されて、みんなが一斉に走り出す。

「ルミ」
「弥涼、行って。弥涼のことは私が守るから。そのために来た。そのためにアークスになった」
「後で苦情聞くって言ってたよね」
「言った。聞くよ。だからほら、早く行きな」
「うん」

ルミから放たれた一閃が、ダーカーを霧散させ道を作る。
pso20141128_002623_040.jpg
ルミが来てくれたから大丈夫。
そんな気がした。

でもそんな希望はすぐに覆される。
ダーカーはいたるところから湧き出し、私達の行く手を阻んだ。
ルミが全部蹴散らすと言ったものの、予測できないところから襲い掛かるダーカーに彼女も手一杯のようだった。
じんくんも懸命にルミの攻撃をすり抜けたダーカーへと向かっていく。

私はルミを手伝うことも、じんくんに加勢することもできない。
何もできない……。
守られて逃げることしかできない。

「逃げてください!」

じんくんの声に振り返る。
転んでしまったのか、怯えて地面にへたり込んでいる生徒が見えた。
私は踵を返し、その子の元へと駆け寄った。

「大丈夫、大丈夫だから。もう少しだけ頑張って!」

根拠のない励ましの言葉をかけて、震えている子を引っ張り起こした。
私はどう頑張ってもルミとじんくんの手助けはできない。
でも、このくらいなら私にでもできる!

「この子は任せて」

じんくんは息苦しそうに「お願いします」と言うと頬に滲んだ血を乱暴に手の甲で拭って、またダーカーに向かって駆け出していった。
へたり込んでいた子をなんとか奮い立たせて走らせる。
そして、へとへとになりながらも逃げていくみんなに声をかけた。

「なるべく固まって走って!散らばらないで!もう少しだから!」

私はありったけの声で叫ぶ。
こうすることで少しでもルミやじんくん達の負担が減ることを願いながら。

けれど大きな声がダーカーの気を引いてしまったらしい。
最初に見たものと同じ形の羽音を立てて飛ぶダーカーが、私に一直線に向かって来た。

「弥涼!」

ダーカーとルミが同じくらいのタイミングで私に飛びかかってくるのが見えた。

「痛っ!」

地面に叩きつけられると同時に、ルミのうめき声も聞こえた。

「ルミ!ルミ!」
「だいっじょうぶ!」

ルミは跳び起きるとダーカーを一刀両断にした。

「弥涼!大丈夫?」
「うん、でも、ルミ……血が……」
「あぁ、私は大丈夫」

そう言うとルミは何かを一気に飲み干す。
緑色の光がルミを包んだかと思うと、血は止まりルミの顔色もすっかり良くなった。

「それ、何?」
「ん?トリメイト?回復薬だよ。それより弥涼、みんなの誘導を引き続きお願い。すごい助かる」
「う、うん!任せて!」

こんな時なのにうれしかった。
ルミはちゃんと気づいてくれていたし私を頼ってくれた。
フォトンが使えなくても、私はルミの助けになれた。

倒れた看板に、ここからE地区だということが書いてあった。
私たちの目指すシェルターはもう少し。
あと少しだ。


* * * * * *


全員無事シェルターに収容されて、何とか一息つくことができた。
私は配布されている水や非常食を箱ごと受け取り、一緒に逃げて来た何人かに手伝ってもらって、ここまで守ってくれたアークス候補生のみんなに配って回った。
候補生のみんなは座る力も残ってないらしく、シェルターの床に体を投げ出していた。

「じんくん、大丈夫?」
「はい。でも、きっつかったぁ」
「お疲れ様。はい、水と非常食」
「ありがとうございます」
「ううん、ありがとうを言うのは私の方だよ」

一般の生徒にも配り終えて、私はシェルターの入り口の方を見る。
ここにルミはいなかった。
小さくため息をつくと、じんくんが傍に来てくれていた。

「ルミさんは、大型のダーカー殲滅命令が出たので行くと言っていました」
「そっか。ならしょうがないね」
「弥涼さん。ルミさんから伝言です」
「?」
「ええと、『苦情はじんくんに言っといて。じんくんがアークスになったらその時伝えてもらうから』だそうです」
「えー、なにそれ。じんくんそれでいいの?」
「伝えるくらいなら、自分が聞きますよ」
「じゃー覚悟はいいかな?」

私の満面の笑みにじんくんはたじろぐ。

「え?代理で聞くだけですよ?」
「うん!わかってる!」
「なんか、怖い……」

私たちがこうしている間にも、ルミは戦っているんだろう。
pso20141128_002906_102.jpg
私を守るためにアークスになったと言ってくれた。

私は、ルミのために、これからアークスになろうとしているじんくんのために何ができる?


* * * * * * 


「ルミさん!新しく出た回復薬試してみましたか?」
「んー、飲んでみた」
「すごいですよね。一定時間自身の体力の10%回復し続けるなんて。すごく助かります」
「値段たっかいけどね」
「そこは確かに。でも弥涼さん、すごいの作ったなぁ。4番目の回復薬『テトラメイト』かぁ」
「まぁ、私の弥涼ですから。さ、時間だ。行くよ。じんくん」
「はい、行きましょう」



私にはフォトンを扱う才能がない。
ルミやじんくんと一緒に戦うことはできない。
だけど、私は私にできることをする。

それがカムフラージュの空の下にいる私の戦いなんだ。


-END-



この物語はフィクションです。
仲良しのフレの名前を借りて書きました。
ルミ&じんくん、ありがとう!!

テトラメイトは架空のアイテムです。
ブログのタイトルを使ったストーリーを書きたかったんです!!゚.+(〃ノωノ)゚.+°



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comment

  1. 2015/03/31(火) 21:42:27 
  2. URL 
  3. 帷子ノ辻神 
  4. [ 編集 ] 
完結~ヽ(`・ω・´)ノ

さ、挿絵・・挿SA?が、いい感じ(・`ω・´)

SAって使い方で、こんなにも格好良くなるのですね(´◆д・`)


自分なんか、バックスペースと打ち間違えて

わけわからないところで撮ってたり(笑)


テトラメイト、実装希望(´◆д・`)

  1. 2015/04/01(水) 08:20:00 
  2. URL 
  3. 椛 
  4. [ 編集 ] 
ルミさんがカッコイイ!(≧ω≦)
アークスになって一年でソロ活動してて、いずれはルミさん無双になるのか?w

新たな回復薬を作るなんてすごい!
その調子でレアドロ+500%ぐらいの作ってください(`・ω・´)

  1. 2015/04/01(水) 10:08:50 
  2. URL 
  3. Lumiere 
  4. [ 編集 ] 
(*/∇\*)
あーもー私をかっこよく書いてくれてありがとっ!!!
恥ずかしいわー
この頃から、キレ+強引キャラだったんだねっ!!
ありのまますぎて(*/∇\*)
ブログの名前のまんまの回復薬だね!
元気をくれるブログ!!
レアドロ+500%とかせいこ事いわずに、
☆12以上しかでないレアドロ作ってくださいw

  1. 2015/04/01(水) 12:01:59 
  2. URL 
  3. 弥涼 
  4. [ 編集 ] 
>じんくん
SAかっこいいよね!
モデルがいいんだよ思うよ?(*´艸`*)

本当はじんくん@候補生がもっとぼっこぼこになる予定でしたが、2話完結にしたかったのでぽっぺ切る程度で終わってしまいました(´・ω・`)
でもこのストーリーのイチオシシーンはいっぱいいっぱいながらも凛々しく頬の血を拭うじんくんです(/∀\*)
映像化激しく希望!!

いろいろ勝手にさせてもらいました!
ありがとー!!


>もみたん
多分500%使っても何も出ないと思うけどね?(´・ω・`)
何も使わなくても出るときは出る。
それがレア!!
(あ、私今なんかカッコイイこと言った!←勘違い)

ルミはかっこいいのです☆.。.:*・゜
片翼のブレイバーですもの!!


>ルミ
主役キター。
恥ずかしいだろ!!
私もルミの小説に出てるのがなんかものっそかわいく書かれてて恥ずかしいよ!!

ありのままですとも。
実際この状況になったら言うと思うけど、異論ありますか?ないですよね!(●゚▽゚)b

私は短編を書くのが好きなので、こういう感じでパラレルワールドをいっぱいつくりたいなぁ。
魔王ルミエールに立ち向かう勇者辻神とか?w

☆12以上しかないレアドロ・・・。
特定のレアばっかりざっくざくでそうな罠・・・((((;´゚Д゚)))

ルミも好きに使わせてくれてありがとー。


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