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狐祭日 byすずきささ

  1. 2014.08.07(木) _18:53:19
  2. 小説
  3.  コメント:0
ゆらゆら揺れる水面から体が引き上げられる。
橙色の電灯、嬉しそうに笑った人間の顔、その向こうに銀色の月が見えた。

『ぱしゃん……』

水面を叩く音がして、外の世界はその形を歪め波紋の中へと消えてしまった。
それを、どうとも思いはしない。

いつものこと。
いつもの繰り返し。

私はここから出られない。
こうして水の中から、銀色の月や橙色の照明や、嬉しそうに私たちを覗き込む人間を見上げるだけ。
時々すっと濡れた和紙が私の体をすくっても、それは私の重みで破れ、私はまたここへと戻る。
何も思うことはない。

思うということすら忘れていた。

とある静かな夜だった。
お祭りのお囃子やたくさんの人間の喧騒は聞こえていたけれど、それでも何か静かな夜だった。

ふと、私の上を影が覆った。
水槽の隅でまどろんでいる私に狙いをつけたのだろう。
どんな人間かと水の下から見上げる。

少し、いつもの人間と雰囲気が違った。
斜めに被った狐のお面はいいとして、その人間の着ているものが何か違った。
形は浴衣に似ているけど、もっと堅そうで厚みがあって。
なんだか今の季節には暑そうだった。

その人間が私の体の下に和紙を滑らせた。

『ぱしゃん』

いつものように、濡れた和紙が破れて落ちた。
ただ、落ちた先は狭く知らない場所……。

激しい水流に揉まれ、一瞬目をまわして気が付くと、私は透明な袋に入れられていた。

ゆらゆら
ゆらゆら

人間が、私の入った透明な袋を提げて、他のたくさんの人間の間を縫って歩いて行く。
揺れる袋の外は、橙色の電灯、たくさんの人間。
水槽の外で少しだけは見たことのある景色のはずなのに、何一つ同じものはなかった。

もっと
もっと

もっと他のものも見たくて私は透明な袋の中をくるくると泳ぐ。

見たい。
知りたい。
外の世界をもっと知りたい――。

ふと、人間は橙色の電灯が続く道から逸れた。
鳥居をくぐると、月明りすらも茂る木の葉に遮られる。
闇夜に見るものがなくなった私は、あることに気付く。

人間に、尻尾なんてあったかな……。

私を連れ歩く人間にはふさふさとした尻尾があった。
目新しさに興奮していて気付かなかったけれど、他の人間にもあったのだろうか。

しばらく行くと、尻尾の生えた人間は、暗く静かな場所で立ち止まった。

「ここを住処にするといいですよ」

人間は冷たい池の水に透明な袋を浸すと、袋の口に手を添えながら、もう片方の手でゆっくり袋を逆さまにした。
袋の水とともに押し出された私の体が、水の中の掌の上に乗る。
それを確認して、人間は水の中からそっとその手を引き上げた。
冷たく清らかな水の中でくるくる泳ぐ私を見て少し微笑むと、その人間は池に背を向け歩き出した。

その向こうで暗い夜空が一瞬大きく輝く。

月とも違う、星とも違う。
見たこともない輝きだった。

私はそれをもっとよく見たくて、離れていく尻尾の生えた人間を追いかけたくて、力の限り跳ねた。
水の中でしか生きられない私が、外を見たいなんて願うものではなのかもしれない。
水から出たら、私にはもう生きる術がない。
だけど、それでも、見たかった。
追いかけたかった。

カラン、コロン。

尾ひれが足になり、下駄の音が鳴る。
胸のひれは浴衣の袖になり、私の元の姿は柄になった。

「あれは、何?」

私の声に、尻尾の生えた人間が振り返る。

「花火です」
「はなび……」

木々の間から覗く夜空の先。
次々と花開いてはキラキラと消えていく花火を私はその場で見上げた。

「もっと、開けたところで見ましょうか」

そう言って、尻尾の生えた人間は歩き出す。
私はその後をついて行った。

尻尾を追いかけ石段を登る。
時折、足元が明るくなるのにつられて後ろを見ると、段々と花火に近づいている気がした。

「着きましたよ」

最後の石段を登り切り、来た方向へと振り返る。
調度打ち上がる音がして、少し後で大きな花火が私たちを照らした。

綺麗だと思った。
けれど、言葉にならなかった。

眼下には見慣れた橙色の灯りがひしめき一直線に伸びている。
あんなに小さく、穏やかな光だったんだろうか。
私は、あの光の下のほんの小さな水槽にいたのか。

夜空はどこまでも続いていて、
花火は大きくて色とりどりで、
煙は風になびき、お祭りのお囃子が遠くに聞こえる。

月は本当は金色だったなんて、知らなかった。

「あの池にいてくれれば、もっと長く生きられたのですが」
「ううん。いいの」

私はこれで消えてしまうけれど、後悔はない。

「すくってくれて、ありがとう」

私の言葉に、彼は微笑んでくれた。

人間じゃなかったんだね。
だってほら、橙色の灯りの下を歩く人間に尻尾はないもの。

「また、いつかお会いしましょう」
「うん、またいつか」

あなたと、この世界を一緒に見れたらいいな。


―終―


最後まで読んでいただきありがとうございました!

※このストーリーはフィクションです。
弥涼も弥涼のフレンドさんも関係ありません。
モデルはいるけどね(*´艸`*)
参考記事

あと、このストーリーは藤田麻衣子さんの「金魚すくい」という歌をモチーフに書きました。
読んでぴんと来たあなたとは良いお友達になれそうです!!ヾ(o´∀`o)ノ
いつか、「金魚すくい」を元にしたストーリーを書きたかったので本望。*:゜☆
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